子供の頃、おかんとばあちゃんの目医者についていった帰りに京阪モールの地下で必ず買う物がある。
その萌黄色の長細い箱にはぬくぬくの御座候が並んでいる。買うのは赤3つの白7つ。私もおかんは白がお気に入り。別に赤が嫌いな訳では無いし、5つ5つでもいいんだけど買う時はやっぱりこの組み合わせ。
帰りの電車に乗る。当時電車が大好きだった私は普段なら運転手さんの後ろに直行なのだが、御座候がある時は違う。「早く食べたいのだ」ぬくぬくのかわがぷにぷにの御座候が食べたいのだ。勿論おかんは「帰ってからやで」とは言うものの結局根負けして一つ食べさしてくれる。これが本当に美味しいんだわ。
家に帰ってくると御座候の箱が汗をかいてふにゃふにゃになってる。おかんはお茶を入れてふにゃふにゃの箱から御座候を取り出す。おかんは必ず白ふたつ。ばあちゃんと私は白と赤をひとつづつで両方たべる。夏だったらこのまま食べるんですが、冬はストーブの上にアルミホイルを敷いて御座候を並べる。並べて少ししてくると程よく香ばしい匂いがしてくるので、そうしたらひっくり返して反対側を焼く。両面焼くとパリパリ皮の御座候の出来上がり、買った時とはまた違う少しお菓子の様な御座候が味わえる。ただし、うっかり焼きすぎるとカチカチに焼けてしまい( ;∀;)になってしまうので注意。
この御座候を食べて美味しいのは間違い無い。しかし、もうひとつの楽しみがある。それは職人さんが御座候を焼く所です。店先で使い込まれた焼き型にぽっぽっぽっと練られた皮が落ちて行く。やがて皮は焼けていき、ぷつぷつ気泡が出てくると職人さんが少し持ち上げて焼き具合を確認する。すると長いあんをのせた金属のといの様なものが登場。びっしりのったあんを贅沢に生地の上に置いて行く。横に並ぶのでわたしの口にも置いていただきたいものだ(笑)あんを置いて少しすると、同時に焼いていたかぶせる皮を手際良くかぶせていく。これも流れるようなリズムのある動きで、ふわっと乗せてぽんと押さえる感じ。そしてもう一度ひっくり返すと共にあいた焼き型に次の生地が流し込まれて行く。出来上がった御座候は焼き台の横に並べられつぎつぎと旅立って行く。子供の頃もこの職人さんの動きを「すごいなぁ」と見ていた事をよく覚えているし、大人になったいまでもこの職人技は「何分見ていても飽きない」し、機会があれば是非とも見ていただきたい。
思い出すと初めて御座候を食べたのは幼稚園の時だろう。もともとどらやきや最中の和菓子が好きだった事もあるけど、気がつけば「美味しい」と言って食べていた。私ももう良い歳。その時からもう数十年経っているので「いままで何個食べたんやろう?」と書きながらふと思ったが、答えはかんたん「いっぱい」だ。
御座候を食べると、おかんやばあちゃんと一緒に出かけて買った時の事。電車の中で食べた時の事。家でこたつに入って食べた時の事をふと思い出す。私にとって御座候は大切な思い出の味のひとつになっている。
写真の割ってる赤はストーブで少し焼き過ぎて焦げ目がついてしまいました( ; ; )でも美味しい。
御座候のオフシャルホームページでは、あずきのお話やこだわりが紹介されていますのでよろしければどうぞ。私も姫路の工場とミュージアムには2度ほど行ってます。工場ショップでだけ食べる事ができる「あずきソフト」がとにかく美味しい。おすすめです。
御座候のオフシャルホームページ
https://www.gozasoro.co.jp/